研究概要 |
昨年度は,マルチスケール解析の一つの基礎となっている特異摂動展開における高次項までを考慮することにより,巨視的な応力がひずみだけではなくひずみ勾配にも依存するという,非局所型構成則の誘導を行った.今年度はその結果を受けて,本定式化に従う二次元弾塑性問題の有限要素プログラムを作成した.また,地殻を平板にモデル化し,地殻による圧縮を簡単な圧縮問題に置き換え,大変形時において発生する変形の局所化領域を断層とみなして数値シミュレーションを行った. その結果,本解析によって得られた変形,応力および荷重変位曲線は,要素数の如何に関らずほぼ一定となり,通常の有限要素法による変形の局所化解析では問題となっている,数値解のメッシュ依存性は生じなかった.このことにより,断層の発生と進展の数値シミュレーションの基礎が確立できたものと考えている.また,地殻構造の平均的な剛性評価については,昨年度に行ったHashinとShtrikemannが示した結果の改善を,森-田中の理論を発展させることによって,弾塑性域まで拡張することができた.以上が本研究における成果である. 今後は,実際の地殻構造の平均物性をより詳細に大変形領域まで評価できるよう更なる改善を続けると共に,横ずれ断層等二次元解析では再現できないような問題もあるため,三次元問題へと本手法を拡張し,最終的には時間項をも含めた,現実の地殻活動の数値シミュレーションを完成させたいと考えている.
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