研究概要 |
現在,わが国では,財政赤字の増大などの社会的要請をうけて,社会資本整備評価必要性が叫ばれている.社会資本整備評価のためには定量的な客観性を有する評価手法が必要であるが,そのためには経済理論に基づいた社会資本整備手法の確立が不可欠である.土木計画学の分野では,これら社会的要請に答える形で,社会資本整備評価に応用一般均衡モデルを適応する試みがここ数年の研究課題となってきている.本研究では旅客交通整備評価のための空間的応用一般均衡モデルの開発と同時に,その実証分析に向けた応用の検討を行うことを目的としている. 一般に,空間的応用一般均衡分析による交通整備評価は物流交通整備を対象としているため,旅客交通を明示的に扱うことが不可能である.そのため,本研究では世帯が消費する自由目的の旅客交通行動と企業が消費する業務目的の旅客交通行動を応用一般均衡のフレームで整合的モデルを構築している.さらに,交通需要データ(全国旅客純流動調査)と社会経済データ(地域間産業連関表)によりモデル内の未知パラメータ推定手法を提案することで実証可能としている. 実証研究としては,わが国における整備新幹線計画,リニア中央新幹線計画,さらに,羽田空港発着枠増加などの効果を計測し,地域別の帰着便益を算出している.一方,東京首都圏における震災による交通マヒの社会経済的被害なども算出している. 以上の研究成果は,土木計画学研究発表会,応用地域学会年次大会,WCTR(世界交通会議),RSAI(世界地域学会),災害比較シンポジウムなどを通じで内外の研究者と意見を交わし,評価を受けている.さらに,査読付き論文として,土木計画学研究論文集,Proceedings of 1^<st> Workshop for "Comparative Study on Urban Earthquake Disaster Managementに登載された.
|