研究概要 |
本研究では,政府による自動車関連税制の設定,世帯による自動車の保有及び使用,自動車メーカーによる燃費改善技術開発,交通社会資本の整備およびサービス水準(移動速度等),そして環境負荷量の各要素および要素間の相互作用をモデル化する.昨年度は,既存研究の整理と自動車の保有と使用の相互作用を考慮して世帯の行動のモデル化を行った. 本年度は,これを踏まえて,まず残りの自動車メーカーの行動,交通社会資本の整備やサービス水準,環境負荷量のモデル化を行う.自動車メーカーに関しては,燃費改善技術投資が燃費のよい新車の生産に寄与する一方,投資が新車価格にも影響を与えることを明示する.交通社会資本については,自動車関連税収が道路整備に充当されること,また道路のサービス水準が,世帯の行動の結果として決まる総走行量と道路ストックに依存する関係を明示する.そして運賃収入と設備投資,運行頻度などの関係を表現することにより鉄道サービス水準をモデル化する.次に,これらのモデルの統合を図り,現況再現性を検証する.最後に,税率および税収の使途を変更したとき,自動車販売台数,総走行量,環境負荷量等がどのように変化するのかについて検討した. その結果,取得・保有段階の課税よりも燃料段階の課税の影響が最も大きいこと,現在行われている税収中立下での取得・保有段階の税のグリーン化よりも,取得・保有段階の税率を引下げ,燃料段階を引上げるという政策の方が,より効果的であること,さらに税収の使途を道路整備のみならず,公共交通の運行や自動車メーカーの燃費改善技術投資の補助にまで拡大することによってより一層燃料消費量を削減できる可能性があることを示した.以上の成果は,今後の税の制度設計に有益な知見を与えるものと考えている.
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