研究概要 |
日本のオフィスにおけるデスクレイアウトは依然大部屋島型対向式が中心である。これは人間環境的な要因,また企業論理での組織とは別に顕れる隠れた組織構造にその一因があるのではないかと考え,本研究では,オフィスにおける平面構成と執務者の領域や作業内容を行動観察調査により把握し,これまでの組織構造に適合する形を超えたオフィス空間のあり方を考察した。 1)島型オフィスにおける組織の実態:一概に島型配置といっても,必ずしも組織のヒエラルキーによって座席が決定されているわけではなく,島の長さはオフィスの奥行きに依存しており,多くのオフィスで一般に考えられている島で一つのグループといった形式とはなっていない。 2)執務の特性とレイアウト:執務者の行動特性は,作業の自主性と多様性から整理できる。空間構成と業務行動の実態は多くが一致しており,決まった移動経路・作業を繰り返す業務や,自席をベースに様々な作業場所との間を往復する業務が見られる。こうした中でも不特定な移動の合間に周遊的に作業をする業務,また部門内の領域を中心として動き回る業務,という特徴も捉えることができた。 3)交流行動の特性:執務者の動きは業務や個人特性に基づく会話を伴ったものであり,交流は個々の場の特性というよりも,一連の業務や動線との関係で発生する。それは部門内か部門外なのかという組織的側面,移動を伴った積極的なものか,自席での受け身での会話なのかという場所の側面で特徴づけることができる。またオフィスで発生する会話の半数以上が席において発生しているが,島型のデスクを挟んで会話が行われることは少なく,むしろ隣り合わせの交流行動が多い。また島の長さが短くなれば多様な位置関係での交流行動が起こることが確認できた。会話発生のキーとなる人物の存在が見受けられ,その多くは業務上の関係が強く,業務上の組織を超える姿は捉えることができなかった。
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