研究概要 |
H13年度ではSnの相転移における核生成とその成長過程やメカニズムを明らかにする目的で、β→α相転移に伴う散乱パターンの変化を単結晶中性子回折法を用いて観測した。測定は高エネルギー加速器研究機構及び英国のラザフォード・アップルトン研究所の中性子散乱施設、KENS、ISISにそれぞれ設置された単結晶回折装置(FOX、SXD)を用いて行った。これらの装置は広い立体角をカバーする検出器を備えており、白色中性子と合わせ用いることで広範囲の逆格子空間を試料や検出器を動かす事なく一度の測定で観測でき、このような相転移カイネティクスの研究には非常に有効である。過冷却状態での時間分割測定の結果、以下に示す結果が得られた。 1)相転移開始前にいくつかの禁制反射位置に散漫散乱が観測された。転移開始後にはこれらが超格子反射となる。 2)相転移開始後の回折パターンに大きな変化が観測された。 1.いくつかのβ相でのブラッグ反射の強度が増大する。 2.超格子反射が現れる。 3.すべての反射が消失する直前にb軸を中心に回折パターンの回転がみられる。 これらの結果は相転移過程に中間相が存在すること、メカニズムにマルテンサイト的要素があることを示唆している。薄膜を用いた電顕での観察結果にも同様にマルテンサイト的な段階が相転移過程に存在するという結果が報告されている[1)K.Ojima et al., Phys.State.Sol.(a)139(1993)139., 2)K.Ojima and A.Takasaki, Philosophical Magazine Letters, 68(1993)237.]。現在、これらの実験結果をもとにした相転移メカニズムのモデルを考察中である。
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