研究概要 |
希土類金属と遷移金属により形成されるLaves相化合物は,その多くが強磁性またはフェリ磁性を示す。室温でC15型構造を持つTbCo_2は転移温度240Kでフェリ磁性へ相転移する。この磁気相転移に伴い,結晶格子は磁化容易方向(立方晶[111]方向)にわずかに伸び,立方晶から菱面体晶に変化する。 本研究ではTbCo_2の放射光粉末回折データを収集し,電子密度分布解析により相転移に伴う結合形態の変化を調べた。 粉末回折データはSPring-8の粉末回折ビームラインBL02B2においてイメージングプレートを検出器としたデバイシェラー法により測定した。窒素ガス吹付け型低温装置を用いて室温と80Kで測定を行った。電子密度分布はマキシマムエントロピー法(MEM)/Rietveld解析により求めた。 得られた電子密度分布から,室温相(立方晶)では最隣接Co原子間に混成軌道により生じたと考えられる共有結合が存在することがわかった。そして,このCo-Co結合は電子的な4面体カゴメネットワークを形成していることがわかった。また,Tb-TbおよびTb-Co原子間に共有結合は見られなかった。このような結合形態の特徴は基本的にはMgCu_2と同様なものであった。低温相(菱面体晶)において,Co-Co結合の4面体ネットワークに大きな変化は見られなかったが,詳細に電子密度分布を見ると,磁化容易方向に垂直なカゴメネット面内のCo-Co結合に比べて,面外の結合の方がわずかに弱くなっていることがわかった。磁化容易方向の格子の伸びはわずか0.5%足らずであるが,放射光とMEMを組み合わせた電子密度解析により微小な結合形態の変化を明らかにすることができた。 また,C15型Laves相で,TbCo_2と同様な相転移を示すTbFe_2やAlベースのYAl_2についても同様な手法により結合形態を調べているところである。予備的な解析結果から,いわゆる小原子(Co, Fe, Alなど)間の共有結合がつくる4面体ネットワークは15型Laves相に共通の特徴ではないかと考えられる。
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