研究概要 |
バナジウムは、水素化によって適度な安定性を持つγ相(VH_2)と、非常に安定なβ相(V_2H,VH)を形成することが知られている。昨年度は、γ相の安定性に対する合金効果の測定と、β相の電子状態の解析を行ってきた。本年度は、種々の合金元素を添加したバナジウム合金について、低水素圧領域でのPCT(圧力-組成-等温)測定を行い、バナジウム水素化物β相(V_2H,VH)の安定性に及ぼす合金元素の影響を系統的に調べた。PCT測定は、濃淡電池型水素圧力センサーを備えた中・低水素圧用PCT装置を用いて電気化学的な方法で行った。 低水素圧領域でのPCT測定により、β相(V_2H,VH)の安定性に及ぼす合金元素の影響を初めて明らかにした。さらに、V_2Hの安定性は、合金元素の添加量にほぼ対応して変化することを明らかにした。また、V_2H相およびVH相の安定性は、添加する合金元素の種類によって、周期表に従って単調に変化することを明らかにした。一方、合金元素による安定性の変化の度合いは、V_2H相とVH相ではやや異なることがわかった。この結果、V-Ti-M3元系合金において、V_2Hの不安定化により相対的にVHが安定化したようにみえる場合もあることが示唆される。実際、V-Ti-Cr合金やV-Ti-Mn合金において、これらの現象が見いだされた。 これら一連の結果に基づいて、バナジウム水素化物の安定性を制御した高容量水素吸蔵合金の最適合金組成について検討を行った。
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