研究概要 |
本年度はセラミックスの放電プラズマ焼結における固相焼結や化学反応を検討するため、昨年度に引き続き,CaAl_<12>O_<19>の固体間反応について検討した.固体間反応と交流2端子法による導電率測定の結果から大気中においてCaAl_<12>O_<19>の主たる欠陥が酸素イオンの格子間イオンとCaの格子間イオンであり,固体間反応においてはCaイオンの拡散が律速することを確認した.この結果から,この欠陥が主たる範囲では固体間反応に酸素分圧依存性がないことが期待できる.また,導電率測定の結果から,4Al_2O_3+CaAl_4O_7=CaAl_<12>O_<19>の反応における標準ギブスエネルギ変化を求めた.さらにその結果と固体間反応より得た放物線速度定数からCaAl_<12>O_<19>中のCaイオンの拡散係数を構成酸化物の活量の関数として求めた.また交流2端子法による導電率測定から0イオンの拡散係数を構成酸化物の活量の関数として求めた. 続いて,放電プラズマ焼結中の粉末の固体間反応実験では平均粒径0.3μmのAl_2O_3,平均粒径7μmのCaAl_4O_7を用い,1400から1700Kの温度範囲で反応させた.試料温度はパンチに穴を開けてR熱電対を挿入して測定した.反応率の測定は検量線を用いたX線回折法により求めた.反応率の時間変化についてはJanderの解析法を用いた.その結果,放電プラズマ焼結におけるk_pの値は通常の固体間反応に比べて4桁ほど大きい値となった.また,パルス通電加圧焼結中の粉末の固体間反応実験においては試料温度のばらつきが多く,反応率の誤差も大きかった.また,放電プラズマ焼結における反応の速度定数の活性化エネルギはバルク同士の固体間反応の場合に比べ低かった.組織観察の結果,パルス通電焼結においては粒成長が著しいことがわかった.反応速度における活性化速度は結晶粒の大きさ,すなわち粒界拡散の影響が考えられるため,単純にパルス通電の効果とはいえない.今後,粒成長の影響を取り除くとともに実験精度の向上を図り,この反応速度の違いが酸素分圧の違いによるものなのか,パルス通電に起因するものなのかを検討する.
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