超臨界水中における部分酸化を用いた水素化は、水素を直接作用させた水素化よりも迅速に進行することが知られており、この水素化種としてギ酸が作用していることが示唆されてきた。しかしながら、その反応速度について定量的に検討した例はなく、実際にギ酸が主水素化剤として作用しているかどうかも明確に示された例はない。そこで本研究においては、380〜400℃、25MPaの超臨界水中で連続反応器を用いてギ酸をもちいたアセトンの水素化による2-プロパノールの生成速度を定量的に測定し、ギ酸による水素化特性を調べた。ギ酸を短時間で昇温し、アセトンを含む流れと混合して反応させ、生成した2-プロパノール濃度をHPLCで測定し、別に測定した昇温部分におけるギ酸の分解速度を用いることによって、超臨界水中におけるギ酸によるアセトンの水素化速度式を導出した。分子軌道法を用いた解析も合わせて行い、中間体の予測も行った。さらに、ギ酸の昇温速度をのばした実験を行ったところ、水素化特性が急激に向上する現象を確認した。その水素化特性はギ酸による水素化特性より一桁以上大きく、ギ酸がほぼ分解によって消滅したと考えられる時点から進行した。ギ酸に変えて水素のみ、水素と二酸化炭素のみを含んだ流れを送った場合にはほとんど水素化が進行しなかったため、一酸化炭素の存在がこの迅速な水素化に有効であり、その水素化速度がギ酸によるものよりも高いことを示唆する新たな知見を得た。
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