研究概要 |
オートクレーブ滅菌(加熱処理)によりアルギン酸から生成する加熱分解物が植物細胞の生理活性に及ぼす影響を調べた結果、細胞の増殖をわずかに阻害したが、種々の酵素の生産を促進した。加熱分解物を解析した結果、その中で、trans-4,5-dihydroxy-2 cyclopenten-1-one(DHCP)が高いエリシター活性を示すことが明らかとなった。また、加熱処理によるDHCPの生成効率は低分子のウロン酸(モノガラクチュロン酸など)ほど高かった。DHCPと活性酸素種の消去剤を混合して植物細胞に作用させた結果、細胞の増殖阻害なしに、酵素の生産を促進させることができた。また、DHCPはアルギン酸(内在性エリシター)と最適な濃度で組み合せて使用することにより、エリシター活性が相乗的に高まった。本研究でこれまでに得られた知見を基に、内在性エリシター(アルギン酸)、外来性エリシター(バクテリア,カビ,酵母など)および加熱分解物を組み合せた高活性エリシターの開発を試みた。外来性エリシターを種々検討した結果、アルギン酸分解菌(Alteromonas sp.)調整物が高いエリシター活性を示した。アルギン酸オリゴマーとAlteromonasを混合してニチニチ草細胞に作用させると、5'-Phosphodiesterase (5'-PDase)が相加的に増大し、コントロールの約18倍の生産性を示した。Alteromonasをアルギン酸を栄養源として培養することで、アルギン酸を低分子に分解し、この混合物をDHCPが効率的に生成する条件(121℃,pH2.0,2時間)で加熱処理を行い、アルギン酸混合エリシター(AMIX)を作製した。AMIXをニチニチ草細胞に作用させた結果、5'-PDaseの生産性はコントロールの約120倍に増大した。また、AMIXはブドウ細胞の色素生産に対しても促進効果を示した。最後に2年間の研究総括を行った。
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