研究概要 |
本研究では複数の抗体を用いてそれらの抗原認識部位を決定し、そのアミノ酸配列情報およびコンピューターを用いた構造計算に基づいて合成したポリペプチドに新機能を持たせるのが目的である。 (1)抗HIV-1 env gp41抗体の軽鎖CDR-1と抗ポルフィリン抗体の重鎖CDR-2をGly-Proで架橋した分子(CA-2)を本目的のために合成した。そして、このCA-2の免疫学的および化学的性質を調べたところ、以下の点が判明した。(1)CA-2は各種ポルフィリン類と10^4〜10^6/Mの親和性定数で結合する。ポルフィリン類はCA-2の1分子について2分子まで結合可能である。(2)CA-2はHIV-1 env gp41の保存領域ペプチド(TP-41)と4.6×10^7/Mの親和性定数で結合する。(3)抗HIV-1 env gp41抗体軽鎖可変領域と抗ポルフィリン抗体重鎖可変領域とを繋いだscFvもTP-41を取り込む能力がある。 (2)抗HIV-1 env gp41抗体の軽鎖超可変領域(CDR)-1ペプチドを免疫原に用い、抗イディオタイプ様抗体の取得を試みた。その中で、i41SL1-2抗体は他のタンパクと交差反応せず、抗原のCDR-1と5×10^9/M、CA-2と2.9×10^9/Mの親和性定数で結合した。ただこのi41SL1-2抗体がCA-2結合した時、予め結合しているポルフィリン分子を離すかどうかの実験では明確な結果が得られなかった。 (3)上記の設計思想を応用して、ダイオキシンに結合できるポリペプチドの設計を行った。抗ダイオキシン抗体の超可変領域(CDR)ペプチドを用いてダイオキシンアナログとの結合性を調べた結果、22merのCDRペプチドは僅かであるが、ダイオキシンアナログである2,3,7-TCDDと相互作用を示すことが蛍光消光法の実験から明らかになった。本法により短時間でダイオキシン類の分析を可能にすることが可能と思われた。
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