研究概要 |
本研究は全反射赤外(ATR-FTIR)分光測定により、種々の湿式エッチング法で得た水素終端化したH-Si(100)表面構造を調べ、Si(100)表面の平坦化の可能性について議論した。 (1)HF溶液のpHと濃度の依存性:エッチング用のHF溶液pHの減少により、(111)方向の異方性エッチングが抑制され、平坦な(100)表面の形成が可能だとSTM測定による研究成果が報告された。種々の低pHのエッチング溶液にSi(100)を所定時間浸漬した後、ex situ ATR-IR測定により、Si(100)表面の水素終端化の状態を観察した。ブロードなdehydride(SiH_2)とmonohydride(Si-H)のピークが観測され、溶液pH及び濃度の違いによるATR-IRスペクトル形状に大きな変化は認められなかった。STM測定で観察する表面の範囲は非常に小さいため、本分光測定結果により、低pHでエッチングする場合、平坦なSi(100)ドメンサイズは極めて小さいと推測した。 (2)電気化学的制御による効果:Siの電極電位を制御することにより、Si(100)のエッチング速度の制御を試みた。N-Si(100)の電位をSiのフラットバンド電位より負の電位領域で制御しながらSi-H/SiH_2の赤外バンドの強度、ピーク位置及び半値幅をエッチング時間及び電極電位の関数としてin situ及びex situ ATR-FTIR測定により調べた。水素発生領域まで電位を制御することにより、Si(100)表面の平坦さの増加は確認されたが、H-Si(111)ほどの平坦な表面はまだ実現されていない。また、実際工業プロセスへの応用には問題がまだ多くある。 (3)Si表面に金属薄膜の成長:上記のATR-IR測定を行う際、より強い表面増強赤外吸収の効果を出すために、Si表面に金属の超薄膜の成長の可能性についても同時に検討した。これまでに実現したCuの他に、Si電極の表面にAu,Pt,Pd及びその合金の成長をエッチング溶液中に無電解法によって試みた。これらの超薄膜を表面増強赤外分光法(SEIRAS)の測定に適用し、PtやPdなどの貴金属の超薄膜のSEIRAS測定に初めて成功した。
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