研究概要 |
前年度は、ニッケル触媒を用いる1, 3-ジエンおよび1, 2-ジエンのアシルスタニル化に関する研究をまとめたが、今年度はそれに引き続いて上記研究課題に関して研究した結果、以下の成果を上げるに至った。 1.アシルスズを共役エノン類と反応させると、アシル基がエノンにマイケル付加した1, 4-ジカルボニル化合物を与えた。この反応はカルボスタニル化反応ではないが、系中にアルデヒドを共存させておくと、これらの基質の三成分カップリング反応が進行し、エノンに由来するカルボニル基のα位、すなわちスタニル基が導入されるべき位置がヒドロキシメチル化された1, 4-ジカルボニル化合物が得られる。なお、これらエノンの反応には、ニッケル触媒だけでなくパラジウム触媒も有効である。また、炭素-炭素二重結合に対する付加反応ではないが、ニッケル触媒存在下アルキン酸エステルのカルボスタニル化が進行し、やはり1, 4-ジカルボニル化合物を与えることもわかった。生成物中のスタニル基は、クロス・カップリング反応により容易にアリール基に変換できることも明らかにした。 2.ニッケル-1, 3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン触媒存在下、アルキニルスズの炭素-スズ結合が1, 2-ジエン(一置換アレン)の2, 3-位に付加し、α-プロパルギルビニルスズ誘導体を与えた。反応は様々なアルキニルスズおよび1, 2-ジエンに適用することができる。これに対して、配位子を1, 3-ビス(ジメチルホスフィノ)プロパンに替えると末端の二重結合への付加が優勢となる、といったように、位置異性体の作り分けも可能である。また、アルキニルスタニル化生成物のホモカップリング体を、様々な多環式化合物に導くことができることも明らかにした。
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