研究概要 |
本研究では、ポリ(アントリレンエチニレン)を主鎖骨格とした共役ポリラジカルを合成することで、次元拡張による磁気結合の強化および光機能とのハイブッリッド化を実現することを目的としている。今年度は、デンドリマー置換基を有するポリ(アントリレンエチニレン)を合成することで、高分子鎖間の相互作用および光学効果について予備的な知見を得た。また、ポリラジカルの磁気測定から、そのスピン状態および磁気的性質について分子構造との相関を明らかにした。 1.前年度の知見を基に合成したデンドリマー置換基を有するポリ(アントリレンエチニレン)では、重合度が数十量体におよび、さらなる溶解性の向上が認められた。 2.デンドリマーの置換数および世代数により、主鎖の捻れ構造または溶解性を変化させることで可視吸収極大波長を500〜700nmの範囲で調節可能となった。 3.光学活性基を有するポリ(アントリレンエチニレン)では、光学活性基を主鎖近傍に配置し、隣接ユニットにも大きな置換基を導入することで、大きなCDシグナルが観測できた。置換基の立体障害により隣接するアントラセン間で共平面から捻れていることが明らかとなった。 4.フェノキシラジカル前駆体を2つ有するブロモエチニルアントラセン誘導体を合成し、パラジウム錯体触媒を用いて自己重縮合することで、頭尾結合の制御されたポリ(9, 10-アントリレンエチニレン)誘導体を合成することに成功した。得られたポリマーのトルエン溶液に活性二酸化鉛を作用させることで、室温でも比較的安定なポリラジカルを得ることができた。 5.2-メチルテトラヒドロフラン中でのポリラジカルの磁気測定から平均スピン量子数S=5/2が見積もられ、スピンラダー構造によってスピン欠陥に耐性のある強い磁気的相互作用を有するポリラジカルが実現可能であることを明らかにした。
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