研究概要 |
1.1,n-di(2-naphthyl)alkane(DNpn)による分子内ダイマーカチオン形成-エキシマーとの相違 DNpn(n=3,5,7,12)の過渡吸収測定を350-2000nmにわたって行うことにより、カチオン帯ならびにダイマー形成にともなう電荷共鳴(CR)帯を同時に観測することに成功した。DNpnにおける分子内Npエキシマーはn=3に対してのみ形成すると報告されているが、Npダイマーカチオンは全てのメチレン鎖長nに対して形成することが観測され、エキシマーとダイマーカチオンとの相違を明らかにした。これは、Npカチオンの寿命がNp励起一重項状態の寿命に比べて長く、Npダイマーカチオンの安定化エネルギーがNpエキシマーの安定化エネルギーに比べて大きいことに起因する考えられる。 2.分子内ダイマーカチオン形成のエネルギーダイアグラムの解明 NpモノマーカチオンおよびNpダイマーカチオンを同時に観測し、そのスペクトル分割に成功したので、両者の濃度比[D]/[M]を定量的に評価することができた。濃度比の定常値より平衡定数Kを算出し、van't Hoffプロットから分子内ダイマーカチオンの標準生成エンタルピーΔH^oを求めた。また、CR帯からは電荷共鳴安定化エネルギーE_<CR>を評価した。ΔH^oおよびE_<CR>、は、鎖長の最も長いDNp12において最も大きな値をとり、架橋鎖の束縛が小さなものほど安定なダイマー構造を形成できることを明らかにした。また、ΔH^oとE_<CR>差から、ダイマー形成時の反発エネルギーE_Rを評価したところ、おおよそ5kcalmol^<-1>であることがわかった。この値はNpエキシマーに比べ小さく、エキシマーに比べNpカチオンは比較的ルーズな構造を有することが示唆された。 3.ナフタレン系高分子におけるホールの電荷非局在化 Np三量体モデル化合物およびポリビニルナフタレン(PVNp)に対する過渡吸収スペクトルを同様に測定したところ、Np三連鎖モデルとPVNpに対して観測されたCR帯のピーク波長が一致したことから、PVNp鎖上に生成したホールは主として三つのNp基に非局在化することを明らかにした。
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