研究概要 |
1.剛直高分子板状結晶の成長機構 剛直高分子板状晶の走査プローブ顕微鏡による表面観察により,比較的長い分子鎖により形成された一次核を起点としてフィブリルが成長し,続いての結晶化によりフィブリル間が埋められ菱形の外形となることがわかった。実際,結晶化途中の試料をろ過し,成長途中を観察するとフィブリル間に孔が観察された。 2.剛直性分子鎖末端の直接観察 剛直高分子板状晶を通常の方法でSPM観察しても,表面形態は径約30〜50nmの凹凸が観察されるのみであり,分子鎖一本の姿はどこにも観察されない。そこで本研究では一本の分子鎖末端に探針が接触して生じたカンチレバーの変位を電圧値として検出することにより分子鎖末端の直接観察を行った。カンチレバー先端にレーザー光を照射し,カンチレバーの変位にともなう反射光の変化を光検出器で検知,電圧変換した後,電圧値として検出した。カンチレバーと分子鎖末端の接触により生じるカンチレバーの変位は微小であるため,水の吸着層が試料表面に存在すると分子鎖末端をとらえにくくなる。そこで乾燥窒素雰囲気下で観察できる装置を作製した。更に,使用するプローブと走査速度などの条件を最適化することにより,再現性のある安定した像が得られるようになった。 3.板状晶表面から突出した剛直高分子鎖末端の空間分布 同一視野を試料表面とカンチレバーの距離を段階的に変化させて走査し,数十の像を撮影した。これらの像から板状晶表面から突出した分子鎖末端の空間分布をとらえることができ、板状晶表面には長さ数nm以上の孤立した分子鎖末端が存在することがわかった。 4.分子鎖末端の分子運動 分子鎖末端と探針の接触により生じた像を詳細に検討した結果、板状晶表面から孤立して突出した分子鎖末端の運動性は室温では小さいことがわかった。
|