研究概要 |
微小重力下で対流熱伝達によって冷却される液滴において発生する3次元マランゴニ対流の解析を行った.今年度は,平成12年度のマランゴニ数5,000からマランゴニ数10,000に増やし,解析を行った.その結果,マランゴニ数5,000では発生しなかった計算が途中で発散するという予期しなかった問題に直面した.プログラムの再チェックを行ったが,プログラミング上の不具合は見つからなかった.また,初期温度外乱の大きさやパターンを変えても,スペクトル数(計算格子数に対応)を増やしても,流れが発達すると計算が発散するため,マランゴニ数10,000以上の液滴内3次元マランゴニ対流を解析する場合には,現在よりさらに精度の良い手法が必要であると結論付けられた.現在は,半径方向速度,渦度,圧力,温度を変数として用いているが,流れ場を記述する変数に,さらに精度を上げることのできるポロイダルベクトルやトロイダルベクトルを用いる手法を採用するなどの対策が必要になると考えられる. 計算が発散するという予期しなかった事態に直面し,原因が手法によるものであると結論付けられたため,本年度並行して行うことを予定していた温度境界条件を対流熱伝達からふく射熱伝達に変更した計算プログラムの開発は断念した. 計算が発散したため定常状態までの計算は行うことができなかったが,計算が発散するまでの結果から表面張力対流の以下の過渡的現象が明らかになった. 1. 波長の長い温度外乱パターンよりも波長の短い温度外乱パターンが液滴表面に存在したほうが,表面張力対流の発達に寄与する. 2. 表面張力対流の発生は,液滴からの放熱を促進する.したがって,表面張力対流を液滴ラジエータに応用する場合,表面張力対流を制御することにより,伝熱面の小型化をすることが可能になる.
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