研究概要 |
1.乾物生産能力,生理的諸形質に違いが認められている栽培イネ2種(Oryza sativaとO. glaberrima)を対象に,個葉光合成機能である光化学反応系の光エネルギー生産反応,葉内の光エネルギー消費反応に注目し,比較を行った.その結果,O. glaberrima種の光呼吸で消費されるエネルギーが相対的に低い傾向にあることが明らかとなった.この理由の一つとして,O. glaberrimaは常に気孔開度が高く,葉内のガス拡散に優れることにより,C02/02分圧比が高まり,キー酵素RubisCOのカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼの活性比が相対的に高くなることが関与していると推察された.O. glaberrima種は気孔が開きやすい性質を持ち,水消費の面から見ると蒸散要求量が大きいというマイナスの要素を持つが,乾物生産の面で見るとエネルギー効率の良い光合成反応を行い,乾物生産能力を高めていると推察された. 2.日本型新旧10品種を対象に光合成・光呼吸の水ストレス耐性を比較したところ,新旧の差が明らかとなった.旧品種において光呼吸は低い傾向にあったが,光化学系がストレスの影響を受けやすいことが確認された.一方,新品種は気孔を閉鎖することで光合成を一時的に停止するが,ストレスからの回復に優れることが明らかとなった. 以上,光化学系のエネルギー生産から光合成・光呼吸によるエネルギー消費のバランスをイネの種,品種間で比較することにより,それぞれの特性を明確にすることが可能となった.
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