研究概要 |
リンゴステムピッティングウイルスのゲノムにコードされる3つのTGBタンパク質(TGBp1,TGBp2,TGBp3)に蛍光タンパク質(GFP)を融合したものを細胞内でトランジェントに発現させて各TGBタンパク質の細胞内局在解析した。トランジェント発現コンストラクトは、大腸菌プラスミドベクターに35Sプロモーター、その下流に各TGBタンパク質の遺伝子とそれにインフレームでGFPを結合して作製した(pTGBp1-GFP,pTGBp2-GFP,pTGBp3-TGB)。これらコンストラクトをパーティクルガン法により宿主植物であるNicotiana occidentalis表皮細胞に導入して、GFPを融合した各TGBタンパク質の細胞内局在をGFP蛍光により共焦点レーザー顕微鏡で観察した。TGBp1-GFPでは糸まり状の構造物、TGBp2-GFPでは皮層の網状の構造物とその上に存在する球状小胞、TGBp3-GFPでは皮層の網状の構造物にGFPの蛍光が観察された。これら局在は、GFPのみを発現させた場合には観察されない特異的なものであった。さらに、TGBp1-GFPをGFPの融合していないTGBp2あるいはTGBp3と同時にトランジェント発現させてもTGBp1-GFPの細胞内局在に変化はなかったが、TGBp1-GFPをTGBp2およびTGBp3と同時に発現させるとTGBp1-GFPの細胞内局在が劇的に変化して細胞の周辺部に数個の固まりとして移動した。そこで、各TGBタンパク質を同時に発現させたときの細胞内局在を、GFPの変異体であるCFPとYFPを用いて蛍光顕微鏡下での二重標識実験を行った。その結果、TGBp1はTGBp2とTGBp3と同時に発現させることにより、TGBp2とTGBp3が共に局在している細胞の周辺部に特異的に局在を変化させることが示唆された。
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