植物マイナス鎖RNAウイルス遺伝子操作系の確立に向けて、ランえそ斑紋ウイルス(ラブドウイルス)の複製酵素を解析するとともに、ゲノムの転写、複製などに関与するシグナルの解析を行った。 1.ウイルスの複製、転写シグナル配列の解析:RNA1には5種のタンパク質、RNA2には推定複製酵素をコードされるが、それぞれはモノシストロニックなmRNAとして発現していることがわかった。遺伝子の結合領域には転写の終結配列、介在配列、転写の開始配列が高度に保存されていた。ゲノム3'末端部の非コード領域(リーダー配列)も転写されていることが確認され、ウイルスの転写、複製に重要な働きをしているものと推定された。 2.ウイルス複製酵素の解析:RNA2の212kDaタンパク質はラブドウイルスとの相同性解析により複製酵素であると考えられる。この遺伝子のmRNAは他のウイルス遺伝子のmRNAに比べて発現量は少ないものであった。この推定複製酵素の一部領域を大腸菌で発現させ、ウサギに免疫して得られた抗血清により、本タンパク質が粒子内に微量存在することが確認された。このことから、ウイルスの感染にはこの推定複製酵素の供給が必須であると示唆された。 3.ウイルスcDNAのクローニング:ゲノムRNA両端を持つ人工ミニゲノムの作製を行い、GFPをマーカー遺伝子として導入した。さらに、RNA1およびRNA2に対応する各ゲノム全長cDNAのクローニングを行った。これらからin vitroで目的サイズの転写産物を得ることができた。 以上、本研究課題では植物のマイナス鎖RNAウイルス遺伝子操作系の確立に向け、その基礎的データが得られたものと期待される。
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