研究概要 |
[目的]土壌燻蒸剤の臭化メチル剤がオゾン層破壊物質として2005年にその使用が全面禁止されるのに伴い、臭化メチル代替法や消毒後の肥沃度管理技術の開発・普及が必要とされている。本研究では、臭化メチル代替法として蒸気消毒法を取り上げ,同法の問題点であるアンモニア態窒素や可溶性マンガンの蓄積への対処法として,消毒後の土壌への堆肥施用の効果について検討した. [方法]高知大学附属農場のビニルハウス内に蒸気消毒、臭化メチル剤(以下MB区)処理区及び対照区(CT区)を設け、トマトを栽培した。蒸気消毒区には,堆肥(牛糞堆肥)を消毒前に施用する区(SB区)と消毒後に施用する(SA区)を設けた。経時的に土壌を採取し,化学性および微生物性を調べた. [結果と考察]1.消毒処理が土壌の微生物バイオマス量や硝化菌数,基質資化性から評価した微生物群集の多様性に及ぼす影響は,SB≒SA>MBであった.2.消毒処理により土壌中のアンモニア態窒素量が増加した(SB>SA>MB).3.蒸気消毒処理により,可溶性Mnが増加した(SB>SA).Mnの増加は,消毒により水溶性還元糖が増加することによると考えられた.4.堆肥を消毒後に施用することにより,1)硝化菌が土壌に付加され,蓄積していたアンモニア他意窒素は速やかに硝化された,2)土壌中の微生物群集の多様性が増大した,3)マンガン酸化菌が土壌に付加され,蓄積していた可溶性Mnが減少し,植物体中のMn含量も減少した.以上から,堆肥を消毒後に施用することは,消毒前に施用することに比べ,消毒による土壌中のアンモニア態窒素や可溶性Mnの増加を低く抑え,消毒後の土壌に硝化菌やMn酸化菌を付加する効果があることが分かった.また,消毒により低下した微生物群集の多様性を,増大させる可能性が示唆された.
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