研究概要 |
放線菌S.griseusの形態分化と二次代謝は、自身の生産する低分子調節物質、A-factorにより制御されている。A-factorはその特異的レセプターArpAを介してadpA遺伝子の転写を促進し、AdpAがストレプトマイシン生合成遺伝子群の制御遺伝子strRの転写を活性化することで、ストレブトマイシン生合成の引き金を引く。一方、adpA遺伝子破壊株はストレプトマイシン生産能のみでなく形態分化や黄色色素生産能をも失っていたことから、形態分化や他の二次代謝産物生産に関与する未知の遺伝子がAdpAの制御下にあると考えられた.そこで、ゲルシフトとPCRを組み合わせたユニークな手法によりAdpAの標的遺伝子の取得を試み、新たに6つの遺伝子を取得した。この中には、気中菌糸形成に必須なRNAポリメラーゼシグマ因子をコードするadsA、形態分化に関与する菌体外分泌プロテアーゼ遺伝子、隔壁形成に関与すると報告されているssgA、ポリケタイド生合成遺伝子クラスターの制御因子と考えられる遺伝子などが含まれ、A-factorシグナル伝達経路がAdpAを起点に複数に分岐していることを実証した.さらに、菌体外分泌プロテアーゼ遺伝子がAdpAの標的遺伝子である可能性が高いと考え解析を行ったところ、トリプシン型プロテアーゼSGT、キモトリプシン型プロテアーゼSprA, SprB, SprDをそれぞれコードする遺伝子がAdpAの標的遺伝子である可能性が非常に高いことを明らかにした。ここれらのプロテアーゼの機能は現在解析中であるが、形態分化に関与している可能性が高いと考えられる.
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