研究概要 |
正常細胞は細胞接着しているとき(足場があるとき)には細胞増殖するが、足場がないときには増殖しない。一方がん細胞は足場の有無に関わらず細胞増殖が可能である。この細胞の足場依存的/非依存的増殖は正常細胞とがん細胞を区別する最大の特徴の一つであり、浸潤、転移とも密接に関わっている。分子レベルで足場依存的/非依存的増殖メカニズムを詳細に明らかにすれば、がんの治療に貢献することができる。昨年までに細胞膜裏打ち蛋白質ビネキシンがERK活性化を足場非依存性することを明らかにしたので、今回そのメカニズムについて検討した。その結果、ビネキシンのリンカー領域がERK活性化を足場非依存性にするために必要十分であることがわかった。ERK活性化の足場依存性に関与すると報告されているFAK, Cdc42,PKA(cyclicAMP dependent kinase), PAK(p21-activated kinase)との関連について検討したところ、ビネキシンはPKA-PAKシグナル伝達経路で細胞接着シグナルを制御することが示唆された。さらにリンカー領域の機能を明らかにするために、リンカー領域結合蛋白質の探索を行い、いくつかのアクチン関連タンパク質を単離した。また、ビネキシンの生理機能の解明のために、新しいビネキシン結合蛋白質KIAA0583を単離および解析した。またビネキシンの生理機能の解明のためにビネキシン遺伝子のノックアウト細胞を作成したしたところ、ノックアウト細胞で細胞増殖が亢進していることがわかった。以上の結果から細胞増殖シグナルの足場依存性や細胞増殖そのものの制御に関わっていることが明らかとなった。
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