研究概要 |
本研究は、N-結合型糖鎖生合成初期に必要な3種のマンノース転移酵素(MT-I,MT-III,MT-IV)をコードするヒト遺伝子の構造・機能を解析することを目的としている。本年度は、以下の1〜4を主として行った。 1.ヒトMT-III及びMT-IV遺伝子のコード領域の解明 ヒトMT-III遺伝子に関しては、完全長cDNAのクローニングに成功し、その全コード領域の構造決定を完了した。ヒトMT-IV遺伝子に関しては、当遺伝子を含むYACクローン923f5中の約1MbのヒトゲノムDNA断片をカバーするBACクローン群を用いてコンティグマップを作製した。現在、これらの整理された各BACクローンを用いてG258変異株の変異相補活性の検討を行い、遺伝子局在領域を限定している。 2.ヒトMT遺伝子の転写調節領域の解明 コード領域が確定したヒトMT-I遺伝子の上流0.2kb〜1.0kbのゲノムDNA領域に関して、現在CATアッセイを行い、転写調節に働いている領域を限定している。今後、ヒトMT-III遺伝子に関しても同様の解析を行う予定である。 3.ヒトMT酵素の大量発現系の構築 ヒトMT-I遺伝子を用いて3種のタグ(c-myc,FLAG,HA)を付加したコンストラクトを作製し、ヒトHeLa細胞に導入した。現在、得られた各タグ付加MT-I遺伝子の安定形質転換株について、各タグに対する抗体を用いてウェスタンプロット解析を行い、MT-I酵素の発現量を解析している。 4.動物細胞におけるヒトMT発現抑制効果の解析 マウスFM3A細胞にヒトMT-I遺伝子のアンチセンスDNAを導入し、得られた安定形質転換株を解析したが、明確な抑制効果が認められなかった。そこで、マウスMT-I遺伝子を新規にクローニングし、そのアンチセンスDNAをFM3A細胞に導入した。現在、その発現抑制効果を検討中である。
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