H13年度は、シタロン脱水酵素のC末領域による基質結合メカニズムとアロステリック変換メカニズムを三次元構造から説明することと、本酵素の阻害剤のデザインに役立つ情報を得ることを目標にした。 (1)アロステリック型に変換した変異酵素を更に詳細に解析し、野生型酵素と比較したところ、野生型はヒル係数1.0の完全なミカエリス-メンテン型酵素であるのに対し、アロステリック型変異シタロン脱水酵素ではヒル係数が1.4程度に変わっており、一つのアミノ酸の変異のみにより明らかにアロステリック型酵素に変換されていることが明らかとなった。 (2)アロステリック型に変換した変異酵素の構造をX線結晶構造解析によって高分解能で決定するとともに、CDスペクトルにより構造比較することによりアロステリック変換のメカニズムを解析した。アロステリック変換は、サブユニット界面や触媒部位とは大きく離れたC末端領域の変異により、ひとつのサブユニットへの基質結合に伴うC末端領域の構造変化が隣のサブユニットの基質結合部位まで伝達されて基質結合をコントロールするように構造変化することにより起こるというユニークなものであることが示唆された。更にこの解析により、基質結合過程ではC末領域の一部の構造変化が必須であることが示唆された。 (3)変異酵素と阻害剤との相互作用について解析することにより、V75AやF169A等の変異酵素では酵素活性をある程度保持した状態で阻害剤との結合が低下していることが明らかになった。なお、薬剤結合に関与する他のアミノ酸に変異を入れた場合は酵素活性大幅に低下した。以上の結果から、V75やF169の変異により薬剤耐性菌が出現する可能性が考えられる。また、これらのアミノ酸と相互作用する阻害剤側の部分を変えることにより、耐性酵素に対応できるようになることも予想される。
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