研究概要 |
植物ホルモンであるオーキシン、ジベレリンは、植物生理現象に多様な作用を示すが、その分子機構は明らかでない。今回、オーキシンとジベレリンの信号伝達系に関する低分子プローブを微生物由来の2次代謝産物中に探索した。オーキシン、及びジベレリンによって誘導される遺伝子発現を指標とし、微生物培養液をスクリーニングした結果、ジベレリンの信号伝達系を特異的に阻害するgibbestatin Bおよび、オーキシンの信号伝達系を特異的に阻害するyokonolide Aを単離、構造決定した。 Gibbestatin B(1)の作用機序を詳細に検討した結果、1は、ジベレリンによって誘導される大麦のα-アミラーゼ遺伝子の発現を特異的に阻害し、また、ジベレリンによって引き起こされる細胞死を抑制した。一方、オーキシンや、アブシジン酸によって誘導される遺伝子発現を阻害しなかった。さらに、シロイヌナズナの植物ホルモン耐性変異株gai,spy,axr,abiなどに対する1の作用から、1は、ジベレリンとアブシジン酸の信号伝達経路が交差する点に作用することが推定された。 Yokonolide A(2)は、スピロケタール環を有する新規22員環マクロライドとして単離した。2は、オーキシンの信号伝達を特異的に阻害することを確認しており、現在、その詳細な作用機序を検討している。
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