地域通貨・エコマネーの最大の功績は、貨幣とその取引がもたらす様々な現象についての人々の理解を急激に高めたことにある。バブル崩壊以後の10年、基幹産業の不振や大手企業の経営破綻によって地域経済が根幹から揺らぐ危機を迎えている北海道では、地域の力を地域に繋ぎとめる運動の一つとして産業クラスター活動や地域通貨運動が盛んに取組まれてきた。これらはいずれも始まったばかりで、試験的運用の域を出ていないが、その目的と交換手段、構成員とそれが成立する地域の社会構造によって様々な展開を示している。地域通貨が現実の地域の上でいかに運用されていくかは、地域の持つ社会的・地理的条件に大きく規定され、最初の作業として、地域特有の課題を探り地域が何故疲弊したのかを明らかにする必要がある。 森林利用産業である林業は、その収益を貨幣タームで置き換え人間のサイクルで投資利回りを計算すれば、地球上の限られた地域でしか充分な管理はできない。低下しつづける利回りの中で生産を担ってきた地域ですら、1990年代前半以降、人工林の皆伐及び跡地の再造林放棄という、人工林利用産業サイクルの断絶を意味する現象が進んでいる。健全な森林の利用システム構築のための政策的支援が地域レベルで必要とされている。素材生産業振興と環境保全を両立させる財政的手法の中に、地域通貨のシステムを取り入れるアイデアの素地を求めることができる。例えば三重県の森林環境創造事業等にみられる試みにその理念と方向性を確認できる。
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