研究概要 |
常緑広葉樹林の成立・維持プロセスの解明の一環として,斜面系列上における実生稚樹の種による分布パターンの違いを調査し,土壌中の窒素形態の他に光や土壌水分といった資源量との関連を考察した。調査は宮崎大学農学部自然共生フィールド科学教育研究センター田野フィールド内の約70年前と10年前に更新された常緑広葉樹二次林で行った。 土壌中窒素形態は林齢の低い林分の方が硝酸態の占める割合が大きかったが,土壌窒素無機化速度は違いが認められなかった。林齢の低い林分では斜面下部ほど土壌窒素無機化速度と硝酸態の占める割合が大きかったが,林齢の高い林分ではこれらの違いは認められなかった。土壌水分含量は林齢の高い林分の方が高く,開空率は林齢の低い林分の方が高かった。 実生稚樹の硝酸還元酵素活性は葉と根ともに,林齢に低い林分に生育していた5樹種の方が,林齢の高い林分に生育していた3樹種より高かったが,これは硝酸還元に必要とされる光エネルギーが若い林分の方が豊富にあるからと考えられた。また根に対する葉の硝酸還元酵素活性の比も若い林分の方が高く,豊富な光エネルギーが有効に利用されていることが分かった。林齢の高い林分の3樹種では硝酸還元酵素活性の種間差は認められなかったが,若い林分の実生稚樹では認められた。しかしこの種間差は環境要因と密接な関係を認めることはできなかった。
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