研究概要 |
研究代表者は,樹木の分化中仮道管の二次壁新生面が,夜間は堆積中のセルロースミクロフィブリルを覆う不定形物質が多く見られ,昼間はその不定形物質は少なくセルロースミクロフィブリルが明確に観察されることを明らかにし,本研究を通じて不定形物質の特定と二次壁形成の周期性について研究してきた. 本研究によって得られた成果をまとめる. 1.ヘミセルロース構成多糖のグルコマンナンを分離・精製し,ウサギを介してこれに対する一次抗体を作成した.この抗体は抗原であるグルコマンナンとのみ特異的に反応することを酵素免疫測定法で確認した. 2.電界放出形走査電子顕微鏡を用いた免疫電顕法に最適な観察条件と試料調整法を確立した.これにより,透過電子顕微鏡では観察が難しかった二次壁新生面での免疫電顕法が行えるようになった. 3.上記一次抗体と手法を用い,夜間二次壁新生面に多く観察される不定形物質の中にグルコマンナンが多量に含まれていることを明らかにした. 4.人工気象室で昼夜を逆転させた苗木においても,照明が暗い時間は二次壁新生面に多くの不定形物質が見られ,明るい時間は不定形物質が少ないことが分かった. 以上の結果から,夜間二次壁新生面に観察される不定形物質は,ヘミセルロースを主体とするマトリクスであり,二次壁の肥厚をもたらす壁成分の堆積は日的な周期性を有していることが推察された.また,その周期は概日リズムではなく,光周期に対応したものであることが明らかになった.光合成活動や物質転流と二次壁肥厚の周期は関係があることが予想され,今後の研究によって,二次壁肥厚過程の解明が期待できる.
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