研究概要 |
1.プランクトンの生体密度および生体内音速の測定: 今年度の動物プランクトンの採集は,4月から11月にかけて北海道噴火湾において行ない,この海域の優占種であるツノナシオキアミの生体密度および生体内音速の測定を行なった。測定法は例年行なっているdensity bottle法およびTime of flight法によった。その結果,噴火湾のツノナシオキアミの生体密度は体長にあまり依存せず,ほぼ一定の値になることが示唆された。 2.プランクトンの音響反射率の測定: 動物プランクトンの音響反射率の実測を,周波数170kHzと230kHzの2周波数を備えた低ノイズ型TS測定装置で行なった。前年度に明らかになった送受波器の指向性の影響は,送受信系の改造により,かなり低減されていた。活きたツノナシオキアミに麻酔をかけて,この装置を用いて音響反射を実測した。また,これと同時に,水中カメラを水槽内に設置し,ツノナシオキアミの姿勢を観察した。その結果,姿勢のちょっとした変化によりツノナシオキアミの音響反射率が大幅に変化し,本装置によってもノイズにマスクされ音響反射率が測定できない部分も見られた。しかし,これらの実測値と上記1のパラメータを用いて音響理論モデルから推定された音響反射率の間には,非常に良い一致を見る事が出来た。従って,ノイズにマスクされた部分も,モデルにより推定できると考える。また,本方法により,生体密度・生体内音速の季節変化に伴う音響反射率の変化を実測で把握することが出来,これをモデルで推定することも出来た。今後は,ツノナシオキアミ以外の動物プランクトンへの本方法の適用,低ノイズ型TS測定装置の更なる改良,および現場における音響反射率の測定を試み,動物プランクトンの音響調査手法の確立を目指してく。
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