研究概要 |
前年度までの研究成果により,タイワンガザミ等の甲殻類が,サトウキビ抽出液に対して嗅覚(触覚)を介した高い感受能力を持ち,かつ,その刺激により索餌行動を引き起こすことが実証された。本年度の研究では,廃糖蜜を用い甲殻類の反応行動を明らかにし,操業試験により漁獲餌料としての有効性を検証する。 1)廃糖蜜のイシガニに対する刺激効果の行動学的検証 廃糖蜜を原液濃度(100%)に対して10^<-6>%まで希釈し,各濃度の刺激に対し解発される行動を魚肉抽出液に対する行動と比較分析した。結果,廃糖蜜は魚肉抽出液と同様な索餌行動を引き起こすことが明らかとなり,漁獲餌料としての利用性が示唆された。ただし,魚肉抽出液と比較し,索餌行動が解発される刺激濃度閾値は廃糖蜜で高かった。 2)廃糖蜜のカゴ漁具餌料としての有効性の操業試験による検証 イシガニを漁獲対象とし,鹿児島県沿岸域においてカゴ漁具を用い,廃糖蜜を餌料に試験操業を行った。餌料には,魚肉,魚肉+廃糖蜜,廃糖蜜のみの3種を用い漁獲成績を比較した。結果,廃糖蜜の利用により漁獲効率の有意な向上は認められなかった。また,同様な実験を鹿児島県熊毛海域でのアサヒガニを漁獲対象としたかかり網漁業でも行ったが,漁獲効率の向上は認められなかった。魚肉とサトウキビの併用餌料がタイワンガザミの漁獲効率を増加させることは知られており,かつ,1)の実験により廃糖蜜によりカニの索餌行動を解発し得ることは明らかである。廃糖蜜を漁獲餌料として利用するためには,濃縮により糖濃度を高めるなどの改良が必要であると考えられた。
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