研究概要 |
昨年度,網地の形状と運動を推定する数値計算用モデルを開発し試計算を行った。その結果,網形状は実測値と計算値で非常によく一致した。本年度は以下にあげる成果を得ることができた。 ■計算モデルに内在する問題点を把握するため,水槽実験により複数箇所の網糸に作用する荷重を測定し,計算値と比較した。その結果計算値はいずれの条件でも実測値よりも過小に推定された。この原因は網地に作用する抗力係数を一定として取り扱っていたことに起因していた。水槽実験時の網糸に対するレイノルズ数範囲ではCd値は流速の違いによって大きく変化する遷移域であった。そこでCd値をレイノルズ数の関数として与え,試計算したところ実測値と計算値は非常によく一致し,計算モデルの精度向上をはかることができた。 ■計算モデルは網地の結節部と脚部を質点としてこれらの運動方程式を連立して解いている。そのため大規模な網地では計算時間の増加は避けられない。そこで効率的な計算を行うため複数の目合をグループ化して計算質点数を減少させることを試みた。その結果10000質点の網地について4目をグループ化した場合,計算精度にほとんど影響を与えることはなく,計算時間は約1/8に減少させることができた。 ■算定結果の視覚化についてはグラフィックライブラリOpenGLを利用してより詳細かつ効率的に3次元表示が可能となった。これによって市販のグラフィクスアプリケーションソフトに依存することはなくなり,解析システムの開発がより柔軟に行えるようになった。 本研究で,網漁具形状をコンピュータによって推定する計算モデルを開発することができた。このモデルは定式化も容易なため応用性が高い。一連の研究成果から汎用性のある網地の形状・荷重を推定するシステムが実用化できる可能性は極めて高くなったといえる。今後は実際の網漁具に応用できるように最終的なシステムの完成を目指す。
|