研究概要 |
スリランカで古くから行われてきた伝統的水利慣行が変容してゆくメカニズムを費用便益分析から解明することが研究の目的である。スリランカで計3度の農家実態調査を行い関連するデータを収集した。分析結果から次ぎの点が明らかとなった。1)浅井戸と感慨ポンプの普及により水利慣行ベトマは急速に変容しつつある。2)水利用に関する相互扶助慣行であるベトマの私的便益・費用比率は1と考えることができる一方,灌漑ポンプ・浅井戸導入による私的便益・費用比率は1.7〜2.1である。よって,個別に灌漑ポンプを導入した場合の私的便益・費用比率がベトマのそれよりも高いことが明らかとなった。これがベトマの急速に変容する一要因であることが示された。3)調査地域で急速に普及する灌漑ポンプと浅井戸により,調査地域で乾季にタマネキ・トウガラシなどの高収益作物が作付可能となっている。こうした浅井戸と灌漑ポンプに対する投資が経済合理的であるかを判断するため投資収益率を計測した。投資収益率は9%〜17%で,必ずしも高い水準にはないことも明らかとなった。 以上が研究結果の概要である。研究の過程で,農村の人口増加がベトマに与えた影響についても分析を進める必要性が生じてきた。これに関連するデータは既に調査から得ており,この結果は2002年8月にマレーシアで行われるアジア農業経済学会で報告する予定である。
|