研究概要 |
本研究課題「地下ダム湖流動・環境問題に関する解析」では,昨年度に得られた成果を基にして解析を行い,シミュレーション結果から地下ダム湖における地下水の流動問題を検討した.そこでは地盤統計学的モデルで一貫して推定する時空間推定手法について,空間特性と時間特性を同等に扱わざるを得ないという従来の矛盾点が顕在していたが,本研究では平易かつ理に適つたやり方でそれを打破できる推定方法を開発した.加えて,地下水流動計算値に地盤統計学的手法のクリギング推定値を組み込んだ物理モデルと地盤統計モデルとの融合に成功し,より現実に則すことの出来る手法の開発に成功した. 前者の研究としては,解析対象の実地盤は沖縄県宮古島の砂川地下水盆とし,貯留域の推定も考慮した広域不圧地下水の1993年10月から11月にかけての水位変動を考察対象として,時空間分布推定を行った.その推定能力や精度を検証するために,観測条件を変化させた本手法の基礎的考察も行った.その結果,FEMのように大がかりな準備や多くの手間をかけることもなく,不良な観測条件下であっても,かなり高い推定精度を有した地下水位分布の推定結果が得られることを示せた. 後者の研究としては,物理モデルと真の構造との差異を考慮して,その差異を地盤統計モデルで表現できるようにして,モデル解析による数値解に統計モデルによる差異値を加えて,より実際に近い結果が推定できるようになる手法を考案し,その手順を具体的に提唱した. 併せて,地下ダム湖の環境解析に関しても,平面二次元を基本としながら,鉛直流動の卓越した範囲だけを三次元で捉え,これらを複合したかたちで解析していく斬新な方法も開発した. 以上の成果から,地下ダム湖の諸問題に対して昨年度と本年度に確立された手法により,環境問題も絡んだ地下ダム湖の地下水流動を容易に把握できるシステムが構築できた.
|