研究概要 |
哺乳動物の卵子を用いた核移植の実験において、ドナー細胞とレシピエント未受精卵細胞質の細胞周期の同調が極めて重要とされている。また、体細胞核を用いた核移植において、G0期のドナー細胞をM期の除核したレシピエント卵細胞質に同調及び融合することでクローン個体を作出する事ができる。 そこで、各細胞周期(G0,G1,S、M及びG2期)に同調された細胞をドナーとして用いて核移植を行った。すなわち卵細胞質は、第二減数分裂中期の卵細胞質(M期)とその卵細胞質に活性化刺激を与えた活性化卵子(S期)をレシピエント卵細胞質としてそれぞれドナー細胞を融合し体外発生能を検討した。核移植卵の体外発生成績は、レシピエント卵細胞質に第二減数分裂中期の卵細胞質(M期)を用いた場合、ドナー細胞がS期以外のすべての組み合わせにおいて胚盤胞期までの発生が確認された。また、M期卵細胞質に活性化刺激を与えた活性化卵子(S期)を用いた場合、すべての組み合わせにおいて8細胞期以降への発生は阻害された。 また、ドナー細胞及びレシピエント卵細胞質にM期を用いた組み合わせによって得られた核移植卵を受配雌に移植検査を行った結果、産子を得ることに成功した。これらのことにより、ウシ体細胞核移植においてドナー細胞にG0期を用いることが重要なのではなく、ドナー細胞とレシピエント卵細胞質の細胞周期の組み合わせが重要であることが明らかとなった。また、体細胞核移植には胚性細胞核を用いた核移植とは異なり、M期のレシピエント卵細胞質を用いることが重要であることから体細胞の初期化因子は胚性細胞核因子とは異なることが明らかとなった。
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