研究概要 |
本研究計画を申請した時点で既に、in vitroで血流型虫体から昆虫型虫体に変態させたアフリカトリパノソーマ原虫を抗原とし、10クローンの単クローン抗体が作製されていた(J.Vet.Med.Sci.,62巻,1041? 1045ページ、2000年にて報告)。また、トリパノソーマ原虫昆虫型中体のcDNAライブラリーも既に製作済みであった。平成12年度にはリボゾームP0サブユニットタンパク質(P0)、ミトコンドリアHSP70および機能不明の新規遺伝子(H42)をクローニングし、全塩基配列を決定した。 平成13年度は(1)血流型虫体と昆虫型虫体、2つの生活環ステージ虫体におけるP0およびミトコンドリアHSP70の転写レベルをノザンプロッティングで比較した結果、両遺伝子共にトリパノソーマの生活環ステージに関係なく同レベルで転写されていることが明らかとなった(第34回日本原生動物学会、神戸市、2001年11月16-18日発表 ; 第71回日本寄生虫学会、伊勢原市2002年3月29-30日発表予定)。(2) T7 RNAポリメラーゼ遺伝子およびテトラサイクリンリプレッサー遺伝子を導入したドランスジェニックトりパノソーマ株(TRIUM183:29-13)の昆虫型虫体を用い、P0遺伝子遺伝子およびミトコンドリアHSP70遺伝子の発現をテトラサイクリン誘導性二本鎖RNA interference法によってノックダウンした。その結果、両遺伝子のノックダウンはトリパノソーマに対して致死的でありことが明らかになった(投稿中)。得られた研究成果をまとめると、P0遺伝子はタンパク質成合成の場であるリボソームを構成するタンパク質のひとつであることから原虫生存に必修であり、原虫生活環ステージ間で恒常的に発現していたことに矛盾はない。一方、ポリパノソーマのミトコンドリアの構造と機能はその生活環において大きく変化することが明らかになっているが、本研究によってミトコンドリアHSP70遺伝子の発現が原虫生活環ステージ間で同レベルであり、同遺伝子のノックダウンによって原虫増殖が抑制されることが明らかとなり、トリパノソーマの生活環ステージ間で同レベルであり、同遺伝子のノックダウンによって原虫増殖が抑制されることが明らかとなり、トリパソ-マの生活環ステージ変換(変態)メカニズムの解明に向けての手がかりを得ることがだきたばかりか、ミトコンドリアHS70をターゲットとした抗トリパノソーマ薬開発への応用に関する重要な基礎データを得ることができた。今後の研究の発展が期待できる。
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