研究概要 |
本研究においてアトピー性皮膚炎のイヌに対して共刺激シグナル分子を利用した新規の根治的治療法を開発するため、健常犬および実験的に感作させてアレルギー反応を誘発させた実験犬における末梢血単核球の共刺激シグナル分子(CTLA-4、CD28、CD80、CD86)の発現パターンをReal time sequence detection systemmを用いて検討した。 健常犬においては、マイトージェン刺激に対して用量依存性にCTLA-4の発現が時間経過とともに増加した。このことから、CTLA-4は増殖したリンパ球を抑制するためにリンパ球増殖に伴ってその発現量を増加させることがわかった。 抗原に対する感作状況とこれら共刺激シグナル分子発現量の動きを検討するため、スギ花粉粗抗原をアラムアジュバントとともに皮下注射して実験的スギ花粉感作犬を作成した。末梢血単核球を分離し、スギ花粉粗抗原添加培養液を用いて培養し、その結果、リンパ球の芽球化反応が陽性を示した群においては、CTLA-4およびCD80の発現は芽球化反応が認められない群と比較して高値を示した。一方、CD28, CD86の発現量は一定値であった。また、実験的感作犬の末梢血リンパ球を感作抗原で刺激すると、CTLA-4, CD28, CD86の発現量には顕著な変化は認められなかったが、CD80の発現量の増加が認められた。さらに、その増加傾向はリンパ球芽球化反応が陽性を示した群では時間経過とともに上昇したが、リンパ球芽球化反応が陰性の群においては刺激後24時間をピークに最大値を示し、その後減少することがわかった。これらのことから、CD80の発現量の増加がアレルギー反応と関与していることがわかった。 以上のことから、CTLA-4がイヌにおいてもリンパ球増殖に関与していることが明らかとなり、また、抗原刺激によるCD80の増加と競合してアレルギー反応を惹超するリンパ球の活性化抑制に利用できることがin vitroにおいて示唆された。アトピー性皮膚炎のイヌに対してCTLA-4を用いた遺伝子治療などが有効である可能性が高いと考えられた。
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