研究概要 |
阿蘇地方に広がる半自然草地植生の多様性を維持管理していくための基礎的知見を得る目的で、植生の多様性に影響をおよぼしている要因とその作用を調査解析した。 阿蘇郡内の北外輪域,南外輪域、中央火口丘域および山東域に立地する12牧野から合計22ヶ所の半自然草地植物群落を抽出し、コドラート法による種組成の調査ならぴ、それらの人為的利用管理法を調査した。各群落植生を序列するため、種組成から群落間の類似度を算出したところ、各群落は二次元的に分散した。このうち第一軸は放牧強度の最も高い群落と利用中止後の年数が最も長い群落がそれぞれ極スタンドであり、利用強度に関する序列を表す因子と考えられた。一方、第二軸は採草頻度が高い群落と放牧強度が高い群落がそれぞれ極スタンドであり、利用形態に関する序列を表す因子と考えられた。しかしこれらの序列において、同様の利用条件でも植生がしない事例も認められた。地理情報システム(GIS)を用い地形データ上に植生データをマッピングして解析した結果、利用条件が同様である群落であっても、標高や地域により群落の種組成に差が認められた。また利用条件が同様でかつ隣接する群落においても立地する斜面方位が特に南北に異なる群落間では類似度が低いことが明らかになった。さらに中央火口丘に立地する一部の群落においては火山活動と人為が複合的に影響を及ぼしていると考えられた。特定の種は立地的に偏在分布するものもあり,種多様度指数および優占度と優占順位の関係から評価した植生の多様性には立地や微地形なども深く関係していることも示唆されたが、採草、放牧、火入れ管理といった利用管理形態とその程度が特に大きな影響を及ぼしていると考えられた。
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