研究概要 |
視細胞のクレアチンリン酸シャトル機構を明らかにするために,ミトコンドリア型クレアチンキナーゼ(Mi-CK)に対する抗体を作製し,免疫細胞化学によって視細胞におけるクレアチンキナーゼの分布を検討した. ミトコンドリア型クレアチンキナーゼ(Mi-CK)に対する抗体を作製するために,視細胞の全タンパク質を2次元電気泳動によって分離し,Mi-CKのタンパク質スポットを質量分析装置によって同定した.このスポットに含まれるタンパク質をPVDF膜に転写後,N末端配列をプロテインシークエンスして, cDNAから予測される配列と比較したところ,Mi-CKのミトコンドリアヘの移行シグナル(シグナルシークェンス)の存在が明らかになった.成熟タンパク質のN末端配列は脳型クレアチンキナーゼ(B-CK)や筋型クレアチンキナーゼ(M-CK)と全く異なっていたので,この部分の14アミノ酸配列(ASERRRLYPPSAEY)を抗原としてウサギ2羽に免疫した.現在免疫作業続行中であるが,抗体価測定のために中途採血した血液から作製した血清を用いて免疫細胞化学を行ったところ,作製したMi-CKに対する抗血清は視細胞のミトコンドリアをラベルし,バックグランドは比較的低かった.これによりプレリミテリーな結果であるが,視細胞のMi-CKはミトコンドリアのみに存在することがほぼ明らかになった.このことは視細胞のミトコンドリアと内接との間のクレアチンリン酸シャトル機構の成立を示唆し,さらに前年度に明らかにした外節・内接間のクレアチンリン酸シャトル機構の存在を支持するものである.
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