研究概要 |
発生初期のニワトリ胚の頭頸部において、glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)遺伝子は味覚情報を中継する脳神経の3つの神経節(geniculate, petorosal, and nodose ganglia)を産生するepibranchail placodeの予定領域に隣接する3カ所の内胚葉に限局して発現している。一方、その受容体はepibranchial placodeの分化予定領域を含む頭頸部の外胚葉に比較的広く発現している。このGDNF遺伝子のplacode由来の3つの神経節細胞の分化に果たす役割を、GDNF遺伝子をepibranchail placodeの予定領域以外の内胚葉に異所性に強制発現させることにより検討した。 前年度において、電気穿孔法を用いて遺伝子の導入を試みた際に、胚の深部に位置する内胚葉に、胚の発生を阻害することなく遺伝子を導入する条件を確立する事ができなが、近年電気穿孔に用いる電極の形状の著しい改良や関連する技術の蓄積により、本研究を始めた当初に比べて電気穿孔法により遺伝子を導入できる組織の適応が急速に広がっている。このため、電気穿孔法により遺伝子を導入する事を再び目指した。胚に微少手術を行い胚深部の内胚葉を露出させることで、その近傍にベクターを含む溶液を大量に注入することやその近傍に電極をおくことが可能となり、その結果外胚葉の下部に存在する内胚葉を含む組織に遺伝子を導入することが可能となることがわかった。続いてGDNF遺伝子を導入した胚における神経細胞マーカーの分布を調べ、現在異所性に神経細胞が誘導される結果を得ている。しかしながら、異所性に分布する神経細胞の性質についてはさらなる検討が必要であり、現在様々なマーカーを用いて検討を行っている。また、微小手術と電気穿孔法を併せて用いる複雑な胚操作のために、現在のところ遺伝子の導入効率が低く、これを高めるための工夫も併せて行っている。
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