研究概要 |
若年者甲状腺癌を,中高齢者の甲状腺癌と比較検討し,病理組織学的特徴,およびその背景にある遺伝子異常などの分子病理学的特徴の解明を目指している.今年度の研究により、以下の点が解明された。 1.若年者甲状腺癌は細胞増殖活性の高い充実性胞巣が高率に出現するが、細胞周期調節蛋白であるcyclin Dの免疫組織化学的発現はやや高い傾向があるものの、有意な差は見出せなかった。RT-PCRを用いた遺伝子発現の検討では、検体の制限があり、十分な症例の蓄積ができなかった。 2.甲状腺濾胞癌における遺伝子異常として注目されているPAX8-PPAR gamma遺伝子再構築について、異常の有無を検索した。甲状腺腫瘍におけるPPARγ遺伝子産物の発現は,0-27.0%に認められたが,濾胞癌に特異的ではなかった.一部の良性腫瘍や乳頭癌にも発現が認められた。濾胞癌は17.4%の陽性率であった。一方、傍濾胞細胞由来である髄様癌では陰性であり、甲状腺濾胞上皮の増殖に関与する可能性が示唆された。RT-PCRによる検索の結果,濾胞癌の67%,濾胞線種50%に標的遺伝子に相当する増幅が認められた. 3.外科的に切除された甲状腺腫瘍10例についてGバンド法による染色体解析を試みた。7例は初代培養に成功せず、解析不能であったが、3例が解析可能であった。3例はいづれも中高齢者群の甲状腺濾胞腺腫であり、核型は正常であった。 個入情報の保護などに関して「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」に則った。
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