我々が樹立したモノクローナル抗体に反応し、腎病変局所に局在する分子の遺伝子を単離するにあたり、以下の2つの作業仮説をたてた。 作業仮説1、目的とする分子は、患者染色体DNA上に存在する遺伝子によってコードされる。 作業仮説2.モノクローナル抗体が交差反応することから、目的とする分子は、この抗体に反応することが判っている分子とアミノ酸レベル・塩基レベルでの相同性が高い。 上述の作業仮説に従い、まず抗体が認識するエピトープを含む遺伝子断片をプローブとしてGenomic Southern Blottingを行い、プローブと相同性の高い塩基配列が患者染色体DNA上に存存することの確認を試みた。ハイブリダイゼーション反応は、塩濃度5×SSPE、温度55度(ホルムアミド非存在下)で行った。洗いは、2×SSC-0.1%SDSを用いて55度20分/60度20分/65度20分各1回行った。その結果、プローブと相同性の高い塩基配列が確かに在在することが判明した。この塩基配列は、全染色体DNA上に少なくとも5コピー存在し、患者のみでなく健常人(日本人男女、白人男性)の染色体DNA上にも存在していた。患者染色体DNA、健常人染魚体DNAの間で、明確なRFLPは見いだせなかった。 次に、この塩基配列を食む遺伝子断片を単離するためにラムダファージベクターを用いてGenomic Libraryを構築した。このGenomic Libraryを、Southern Blottingと同じ条件でスクリーニングした結果、10クローンのファージを単離できた。現在、各ファージに組み込まれたヒト遺伝子断片の塩基配列を解析中である。
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