研究概要 |
タイト結合は、上皮・内皮の最も内腔側に存在する細胞間接着装置で、細胞間の選択的透過性を制御するバリア機能の本態である。近年いくつかのタイト結合関連分子が見い出されており、膜貫通分子claudinは少なくとも20種類からなる遺伝子ファミリーを形成することが明らかとなった。マウスF9細胞株は、レチノイン酸存在下で培養すると、上皮様細胞に分化する。我々は、F9細胞株にリガンド依存性Creリコンビナーゼ(Cre-ER^T)とreverse tetracycline-controlled transactivator (rtTA)を恒常発現させ、多数の遺伝子の導入・ノックアウトと遺伝子発現の時間的・量的調節が行なえる遺伝子改変F9細胞株(F9:rtTA : Cre-ER^T L32T2)を樹立した(Exp.Cell Res.260,334-339,2000)。また本細胞株を用いて、1)レチノイン酸がclaudin-6,claudin-7,occludin分子の発現や、タイト結合のバリア機能を誘導すること、2)タイト結合の新生過程では、小さな分子に対するバリアが大きな分子に比べて先行して形成されること、3)レチノイン酸がタイト結合に及ぼす作用は、特定のレチノイドX受容体-レチノイン酸受容体(RXR-RAR)二量体によって伝達されることを示した(Exp.Cell Res.263,163-172,2001)。本細胞株は、生体バリアの本態であるタイト結合の構築・機能・制御機構を分子レベルで明らかにし、タイト結合の破綻による種々の病態の成立・治療に貴重な情報を提供することが期待される。
|