研究概要 |
臨床分離腸球菌E.faecalisからフェロモン反応性接合伝達性バクテリオシンプラスミドpYI14(61kb)を分離した。このプラスミドを保有する宿主はこれまで報告されているI〜III型バクテリオシン(溶血毒素型バクテリオシン等)とは異なる活性域を示すバクテリオシンを産生し、新たなタイプ(IV型)と考えられた。シャトルベクターを用いた連関クローン法により制限酵素地図を作成した。pYI14は16個のEcoRI断片A〜Pで構成され、その順はAHMLJKOBDNPGIEFCであった。連関クローンのうちEcoRI断片AH(16kb)を含むクローンのみが腸球菌内でバクテリオシンを発現した。このクローンを含む宿主は自身のバクテリオシンに対して耐性を示すことから、バクテリオシンに対する免疫能決定因子もこの断片内に保持していることが判明した。 この発現クローンを用い、バクテリオシン遺伝子の遺伝学的解析を行った。制限酵素を利用した欠失変異株を作製し、トランスポゾンTn5,mini-Tn7による挿入変異株を分離した。これらの変異株の解析から約6kbの領域がバクテリオシン発現に必要であること、またこの領域は少なくとも二つの機能領域に分かれることが明らかとなった。さらに、得られた変異株間でのバクテリオシン活性相補試験により、その前半はバクテリオシン前駆体の発現の領域、後半は前駆体型バクテリオシンの活性化(成熟化)と免疫能の領域であることが明らかとなった。 バクテリオシン発現領域を含む約12kbの領域の塩基配列を決定した。発現領域には同一方向に転写される少なくとも5個のORF(ORF3058,5109,5689,6123,6693)が存在した。前半領域には595個のアミノ酸をコードするORF3058が存在し、グラム陽性菌の種々の細胞壁溶解(溶菌)酵素と高い相同性を示し、これがバクテリオシン前駆体構造遺伝子(bacA)であると推測された。この下流に存在する2つのORF(ORF5106,5689)も前駆体発現に関与していることが変異株の解析から推測された。後半領域には726個のアミノ酸をコードするORF6693が存在し、これがバクテリオシン活性化因子(bacB)であると推測され、これは枯草菌染色体に存在する機能不明な遺伝子ybfGと高い相同性を示した。
|