研究概要 |
インターネット上で公開されているStreptococcus pyogenesのゲノムデータ及び既報の遺伝情報より本菌の病原因子に関連すると思われる遺伝子及びその制御遺伝子71種を選び出し,各遺伝子をPCRにより増幅し精製後スライドガラスに固定化し,DNAマイクロアレイを作成することに成功した.また細菌からtotal RNAを安定して回収する方法を確立した.S.pyogenesでは発現しない遺伝子を同一アレイ上に固定化し,in vitro転写で得たmRNAを一定量加えることで定量化の基準とする方法を確立した. 激症型A群溶連菌感染症(TSLS)患者由来のS.pyogenes菌株を種々の異なった条件で培養し,toal RNAを抽出し,蛍光標識cDNAとした後,アレイ上で競合hybridizationを実施,各遺伝子の発現量比の測定を行ったところ,M1型T1型SpeB産生S.pyogenes株では5%CO_2存在下で培養した場合は好気条件で培養した場合に比べ特定の発赤毒素の発現量が非常に高くなっていた(SpeBで数十倍,SpeFで数倍).またマイトジェンファクター,免疫応答分泌蛋白などに関連する遺伝子の発現量にも増加が認められた.別の菌群では異なった傾向が見られ,TSLS由来であっても菌株によって遺伝子発現プロファイルが異なっていた.現在,各菌株グループでの遺伝子発現の傾向を明確にするため,より多くの菌株について解析を行っている. 本研究の成果からTSLS病態は多くの遺伝子の発現が寄与している可能性が示唆された.今後生体側の反応を加味して,さらに包括的な遺伝子発現のモニタリングを行い,TSLS病態に寄与する菌体側の因子の全容を明らかにしていきたい.
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