研究概要 |
腸管出血性大腸菌O157感染症は、一頃のように大流行を見せることはなくなってきた。しかしながら、先進国において散発的に感染者が観察されており、その効果的な治療法の確立が待望されている。O157感染では溶血性尿毒症などの重篤な症状が小児において著しく、治療は困難をきわめている。溶血性尿毒症の原因はO157が産するベロ毒素が原因となっていると考えられており、その遺伝子はO157に溶原化するラムダ様ファージゲノム中に存在している。ベロ毒素遺伝子は2種類に大きく分類され、stx1,stx2と表記される。この二つの遺伝子のどちらを有するかにより、溶原ファージの種類が分けられ、それぞれVT1ファージ、VT2ファージと呼ばれる。 先に私たちの研究グループではO157に内在するVT2ファージの全ゲノム構造を明らかにし、それが、基本的にラムダと同一であることを示した。本研究ではstx2遺伝子の発現機構を明らかにするために、stx2の上流にあるpR'プロモーターの同定を行った。方法としてはpR'プロモーターと思われる領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したプラスミドを大腸菌BL21株に導入し、ルシフェラーゼの酵素活性を指標として、pR'プロモーターの絞り込みを行った。その結果、Q遺伝子の3'端180塩基では非常に高いルシフェラーゼ活性を確認することができたが、Q遺伝子の3'端180塩基にそのさらに下流320塩基を加えた配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流につないだ場合には活性が低下した。このことはQ遺伝子の3'端180塩基にプロモーターが存在し、その下流320塩基にはターミネーターが存在することを意味する。
|