研究概要 |
平成2年にべースライン調査を実施した宮城県14町村に居住する女性一般住民(調査時40〜64歳、計24,769人)の乳がん羅患状況の把握を宮城県地域がん登録資料との照合により実施後、このコホート対象者のベースライン調査における喫煙および受動喫煙曝露状況の回答とその後の乳がん罹患との関連を Cox 比例ハザードモデルによりハザード比を算出することにより検討した。その際、年齢、飲酒、初産年齢、出産数、初潮年齢、BMI(body mass index)、乳がん家族歴、婚姻状況を補正した。またべースライン調査以前にがん既往歴がある者は解析対象から除外した。 現在喫煙者1,645人から11人、過去喫煙者371人から3人、非喫煙者15,755人から101人の乳がん罹患があった。非喫煙者を基準とした時の過去喫煙者、現在喫煙者の多要因補正のハザード比はそれぞれ1.39(95%信頼区間、0.43-4.46)、1.16(0.61-2.23)であり、リスクの上昇は有意ではなかった。また喫煙歴がある者(過去喫煙者と現在喫煙者をあわせたもの)のハザード比は1.20(0.67-2.17)となった。 受動喫煙曝露については、非喫煙者で全体の43.3%が家庭においてほとんど毎日曝露を受けていると回答した。家庭での受動喫煙曝露がはとんどない群と比較した時の、時々〜週3、4日曝露群、ほとんど毎日曝露群の多要因補正のハザード比は0.60(0.36-0.998)、0.47(0.28-0.78)となり、曝露群で乳がんリスクが有意に低下していた(trend p=0.004)。また小・中学校時の受動喫煙曝露との関連については、父親が喫煙者である群の多要因補正のハザード比が0.87(0.56-1.33)、母親が喫煙者である群のハザード比が1.34(0.59-3.09)であり、いずれも有意な関連を示さなかった。
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