研究概要 |
本研究は、小学校高学年児童、中学校および高等学校生徒を対象に、いじめを構成する加害群、両経験群(いじめるいじめられる両方を経験)、被害群、傍観群、無関係群の分布とその学年による推移を横断的に質問紙法によって明らかにすることと、これら5群の抑うつ、孤独感、自尊感情、社会的支援、希死念慮、人間関係、登校意欲等の精神衛生の差異を比較検討し、小中高での特異性を明らかにすることを目的とする。 小学校は群馬県内の公立小学校6校(4,5,6年生1,02名)を対象に、中学校は公立中学校5校(1,2,3年生1,120名)を対象に、高校は公立高校4校(1,2,3年生974名)を対象とした。質問項目の内容は、小学生版は基本的属性、睡眠状況、登校意欲、いじめ、抑うつ気分であり、中高生版は基本的属性、希死念慮、孤独感、自尊感情、不登校関連、いじめ関連、抑うつ性、いじめに対する知識・態度・行動等である。 小学生は975名(94.8%)、中学生は1,015名(90.6%)、高校は905名(92.9%)の有効回答を得た。小中高の加害群の分布はそれぞれ12.1%、15.3%、6.9%であり、両経験群はそれぞれ7.3%、5.7%、1.9%であり、被害群はそれぞれ12.7%、7.1%、3.5%であり、傍観群はそれぞれ29.7%、39.5%、24%であった。高校がいじめ関与する者の割合が低かった。また、小中高ともにいじめの分布にはっきりとした男女差は見られなかった。いじめ5群の精神保健の差異で共通する結果として、両経験群は、希死念慮、登校意欲が他群に比べ最もネガティブであった。また、抑うつ気分、自尊感情および孤独感が、被害群についてネガティブでもあった。これらのことから、小中高を通じて、両経験群への精神的ケアの重要性が示唆された。成果の一部は米国ハワイ州の思春期精神医学会にて報告した。
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