研究概要 |
【目的】1年目に我は有機リン農薬がヒトNK,LAK(lymphokine-stimulated killer),マウスNK,CTL(cytotoxic T lymphocyte),LAK活性を有意に抑制し、その抑制順位はヒトNK>マウスNK>マウスCTL>マウスLAK>ヒトLAKであることを明らかにした。本年度に有機リン農薬によるGranzyme(A,B,3,H,M)への影響を検討し、有機リン農薬によるNK及びCTL活性への影響のメカニズムを解明した。 【材料と方法】(1)DDVPによるGranzyme A,B,3,H,M活性への影響:GranzymeはNKやCTLなどの細胞の顆粒中に存在する酵素であり、NKやCTLが標的細胞を傷害する際に重要な役割を果たす。これまでヒトにおいて5種類Granzyme(A,B,3,H,M)が確認されている。本研究ではDDVPをYT細胞(human NK cell line)由来のGranzymeの活性測定系に加えその阻害作用を検討した。Granzyme A,B,3,H,Mの活性測定はそれぞれN-benzyloxy-carbonyl-lysine thiobenzyl ester(BLT:GrA/3),Boc-Ala-Ala-Asp-thiobenzyl ester(GrB),Suc-Phe-Leu-Phe-thiobenzyl ester(GrH),Boc-Ala-Ala-Met-thiobenzyl ester(GrM)を基質とし、5,5-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)の存在下でマイクロプレートリーダー(415nm)を用いて行った。Negative controlはK-562細胞を用いた。Cell lysatesを調整した際の細胞濃度はいずれも5x10^7/mlであった。 (2)YT,human PBL(peripheral blood lymphocyte),human LAK細胞中のGranzymeのmRNAの発現量の解析:ISOGENキットを用いて各細胞からtotal RNAを抽出した。各GranzymeのmRNAの発現量はRT-PCRとNorthern blotting法で評価した。Negative controlはK-562を用いた。 【結果及び考察】(1)DDVPが顕著にGranzyme A/3,H,Mの活性を阻害し、そのIC50はそれぞれ0.05,0.03,0.05mMであった。一方DDVPによるGrB活性への阻害は認めなかった。 (2)DDVPがGranzyme A/3,H,M活性の阻害を介してNK,LAK,CTL活性を抑制したと考える。 (3)各細胞のmRNAの発現量はYT細胞ではGrB>H>M>3>Aの順で、PBLではGrH>B>A>3>Mの順で、LAKではGrB>A>H>3>Mの順であった。IL-2はin vitroでPBLのGrA,Bの発現量を増幅したが、Gr3,H,Mの発現量には影響が少なかった。以上の結果からDDVPに対する反応性が細胞によって異なることは、細胞中の各Granzymeの量比が異なることに関連すると考える。
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