ABO血液型抗原について、組織特異的発現、細胞分化に伴う発現及び癌細胞での抗原の欠落が知られている。このような現象を分子レベルで解析するためにABO式血液型遺伝子の発現制御機構について研究を進めている。ABO式血液型遺伝子の上流域は、転写開始点の上流2kb〜0.9kbにAlu、LINE領域があり、転写開始点の上流0.7kbに新たに同定した転写開始点がある。そこはCpG islandの上流側の辺縁にあたり、その下流約1.3kbの範囲がCpG islandになっている。ABO式血液型遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化は、その程度及び頻度が種々の培養細胞により異なっていたことから、転写開始点上流のAlu、LINE領域を含む広範囲についてDNAメチル化状況を調べた。その結果、調べた細胞はABO式血液型遺伝子の上流域のAlu、LINE領域内のCpGサイトで高頻度にメチル化されていた。近年メチル化DNAに結合するタンパク質がみつかり、このメチル化CpG結合ドメイン(MBD)を持つタンパク質のいくつかがヒストン脱アセチル化酵素複合体に含まれることが報告されている。よってABO式血液型遺伝子の上流2kb〜0.9kbのAlu、LINE領域はネガティブエレメントであり、この領域のメチル化がクロマチンの修飾と直接結びつきクロマチン構造を変化させると推測される。期間中にAlu、LINE領域からヌクレオソーム1個分下流側に新たな転写開始点を同定しており、ABO式血液型遺伝子のAlu、LINE領域が新たな転写開始点及び従来からの転写開始点へ及ぼす影響については今後の課題である。
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